賃金改定は   二極化!
制度の
有無で
第15回地方委員会
連合愛媛2003春季生活闘争中間まとめ

T.はじめに

1.        連合愛媛は、2月20日に開催した拡大執行委員会(地協・構成組織代表者)において「2003春季生活闘争方針」を決定し、取り組みを進めた。 

2.         連合愛媛は、今次春季生活闘争を『雇用と生活を守り抜く闘い』と位置づけ雇用確保と景気回復を中心とする政策制度要求実現に向けて、本部指導の下02年秋の段階から重点課題を設定し継続的な取り組みを行ってきた。その結果、02年末に確認された政労使合意に基づき、労使で構成する『愛媛県地域労使就職支援機構』が5月に設立され、具体的な成果に結びつけていく事業を展開することとなった。 

3.         方針では、デフレ状況下での最悪の雇用情勢の中、4本の『最重点課題』を設定し、その具体化に向けてすべての組合が取り組む3本の『ミニマム運動課題』を設定した。 

4.         そして、具体的な賃金改定要求については、賃金カーブ確保を大前提に産別方針を最優先に取り組むとしつつも、賃金カーブ維持分の算定が困難な組合など中央方針には組みしづらい組合については、連合愛媛が初めて設定したミニマム要求値4,600円を満額確保を条件に設定した。(この要求額は、実態調査に基づく連合愛媛傘下の中小労働者の11歳間差である)  

5.         連合愛媛では、25日に『中小共闘センター』を立ち上げ、当センターを中心にして、総決起集会等を開催し、闘いの盛り上げをはかってきた。そして、闘いと並行して、要求・妥結結果についてFAXやインターネットによる情報提供を行ってきた。 

6.         運動のすすめ方では、そのターゲットを組織内の地場中小組合員はもとより「未組織労働者への波及効果」を念頭に入れながら展開した。特に今次闘争では、連合愛媛独自のミニマム要求額(取りきり)4,600円を前面に掲げ、メーデーの大きな柱の一つとするなど、地場中小労組の実質山場となる5月初旬に至るまではこの額にこだわりを持ち続ける闘いを展開した。  

7.         さらに、『不払い残業の撲滅』運動を連合の全国キャンペーンにあわせて展開した。特に『何でも相談ダイヤル』等の相談窓口には多くの相談や告発が寄せられ、その実例を整理しながら使用者団体や労働局へ報告し具体的な改善申し入れを行った。本運動はマスメディアを通じて広く世間に認知されたため、運動を展開するにあたりある種追い風が吹いたが、本運動については時期的なものでなく通年的なものとすることを確認した。 

8.         また、昨年に引き続きインターネットの連合愛媛ホームページ上に組織内の賃上げ状況をほぼリアルタイムで掲載し、組織内だけではなく組織外への情報発信を行った。更に、定期昇給分(相当分)11年間差情報開示を行うことで、ベア・ゼロ=賃上げゼロの波及を阻止する取り組みを行った。  

9.         中間的なまとめではあるが、賃金改定については、3月内決着の組合はほぼ賃金カーブを維持できた反面、4月以降、カーブ維持に届かない組合が漸増してきた。昨年との比較では、ベア獲得の割合が減少する一方で、賃金カーブ維持の割合が増えた。賃金カーブ維持の達成度合いは、賃金制度が整備されているかどうかに大きく左右され、制度の有無によって「二極化」しているといえる。 

10.    特に中小企業が直面している状況や課題は、産業・業種によってばらつきがあり、賃金改定や雇用問題の状況についてもさらに細かく点検した上で今後の対応を行っていく必要がある。  

11.    3月2日に開催した『2003春季生活闘争総決起集会』では、この時期としては異例の4,600円という具体的数字を要求額に設定し、さらに集会後、市内へデモ行進を行い広く県民に『春闘』を訴えた。 

12.    さらに県下9地協で行われたメーデー大会の中で、(この時期に及んでも)いわゆる『春闘』を大きな柱に据えたことに対し、組織内外から少なくない評価をいただいたが、何よりも今次春闘の一連の行動を通じ連合愛媛の存在感を世間に知らしめることができたことと組織内部の再結集が図られたことに大きな意義がある。

U.具体的な取り組みの評価と課題

1.雇用の維持・安定の取り組み

(1) 最悪の雇用情勢を受け、『雇用と生活を守り抜く闘い』と位置づけ、雇用確保と景気回復を中心とする政策制度要求実現に向けて、本部指導の下02年秋の段階から重点課題を設定し継続的な取り組みを行ってきた。連合愛媛としては、個別の労使だけでは解決できない問題(マクロレベルでの景気回復に向けた政策転換と雇用創出、能力開発、失業者支援、雇用維持に向けた雇用政策の抜本強化など)を政策課題として、愛媛県(知事)・労働局・経営者団体等に要請した。

(2) 雇用の維持・確保に関する労使協定・労使確認などの取り組みは、昨年の協定の再確認・実効確保などを含めて継続して取り組まれた。しかし、全体としては非自発的失業の増大に歯止めはかかっておらず、通年的な指導・支援態勢の強化が重要になっている。 

(3) 2002年秋の段階から重点課題を設定し継続的な取り組みを行ってきた。その結果、2002年末に確認された政労使合意に基づき、労使で構成する『愛媛県地域労使就職支援機構』が設立され、具体的な成果に結びつけていく事業を展開することとなった。

(4) しかしながら、中小・地場の職場では、今次春闘交渉中においても、経営側からの雇用調整提案や倒産・事業所閉鎖などが少なくなく、通年闘争として取り組みの強化が求められる。

 

2.「ミニマム運動課題」の取り組み

(1) 「賃金カーブ確保」「パートの賃上げ・最賃協定」「不払い残業撲滅」それぞれの課題について、各組合の取り組みは昨年より前進した。とくに、パートの賃上げ・最賃協定、不払い残業撲滅については、多くの産別が方針のなかにきちんと位置づけており、十分な集約はできていないものの、通年的な取り組みに結びつくような態勢が整えられつつある。

(2) ミニマム運動課題は、長い時間をかけた合意形成を通じて設定したものであり、すべての職場で取り組むことにより春季生活闘争の活性化と求心力の強化をめざす取り組みである。今春季生活闘争を通じて、一定の社会的インパクトを与えることもできたという成果も踏まえ、その定着に向けてさらに継続的に取り組んでいく必要がある。

@      ミニマム要求額4,600円の設定。

A      地域ミニマムの再構築と周知。

B      『不払い残業の撲滅』運動の展開。

 

3.環境条件の整備

(1)県行政への要請について

県行政への要請については@本部方針に基づき各構成組織の意見も反映させ、重点要求を中心に部局交渉(1月17) A雇用問題を中心に絞り込んだ形で知事と連合愛媛との定期協議に臨んだ。(25日)

(2)経営者団体への要請について

経営者3団体への要請は、@愛媛県経営者協会、A愛媛県商工会議所連合会、B愛媛県中小企業団体中央会へ春季生活闘争方針()のうち、4,600円の連合愛媛ミニマム要求額の趣旨説明と『不払い残業撲滅運動』への協力を強く要請した。(33日)

(3)労働基準局への要請について

労働基準局への要請については、地域雇用の安定・創出策の強化、労働環境・条件の改善、ミニマム運動への協力を中心に要請行動を行った。特に今回は『不払い残業撲滅運動』への理解と共闘を訴え、具体的な相談案件も紹介しながら当局との連携強化を要請した。(325日)

局との話し合いは、特に喫緊の雇用対策などその問題意識は共通であるため、前回に引き続き内容の濃いものとなり、形式論だけでなく、具体的な論議もできるようになった。

 

4.賃金改定の取り組み

(1) 連合愛媛は、賃金カーブ確保を大前提に産別方針を踏まえたうえで、格差是正を求めるところ、賃金への配分ができると組合が判断したところは賃金引き上げに取り組むとしつつも、賃金カーブ維持分の算定が困難な組合など中央方針には組みしづらい組合に対し、連合愛媛が初めて設定したミニマム要求値4,600円を満額確保を条件に設定した。(この要求額は、実態調査に基づく連合愛媛傘下の中小労働者の11歳間差である)

(2) そしてその闘い方は、連合愛媛独自のミニマム要求額(取りきり)4,600円を前面に掲げ、メーデーの大きな柱の一つとするなど、地場中小労組の実質山場となる5月初旬に至るまではこの額にこだわりを持ち続ける闘いを展開した。

(3) 512日開催した第4回中小共闘センターにおいて、@最終解決期限:523日、A妥結ミニマム基準:3,000円を設定して最終の追い込みを確認した。

(4) 賃金要求を行った単組数(報告数)は一昨年の175単組(37,343人)、昨年の163単組(29,605人)から154単組(28,543人)と減少傾向にあり、長引くデフレ不況を反映して歯止めのかからない組織人員の減少に加え、合理化対応などのため賃金要求を断念した所も少なくないのではないかと推測される。(表1参照)

(5) 連合愛媛は、基本的にはゾーン方式を踏襲し、取り組みをすすめた。しかし地場中小労組は4月中旬決着には拘らず、最終を5月末(23日)に設定し、ミニマム要求額に最後までこだわった取り組みを展開した。

(6) にもかかわらず、その結果は、登録154単組(28,543人)のうち4月末回答を引き出した組合は、82単組(21,067人)となり、解決率では53.2%と昨年比で6ポイント改善された。これは、連合方針が要求段階から『賃金カーブ維持』を打ち出したことから、定昇制度のある組織についてはその交渉自体は割りと順調に行われたところが少なくなかったと判断できる。賃金カーブを維持できた組合が増えている一方で、ベア獲得の組合の割合が昨年より減っているのもまた事実である。 

表1. 4月末解決状況

年度

登録組合数

4月末解決

解決率

94

220

168

76.3%

95

193

128

66.3%

96

190

142

74.7%

97

202

162

80.1%

98

214

143

66.8%

99

188

124

66.0%

2000

203

139

68.5%

2001

175

109

62.3%

2002

163

77

47.2%

2003

154

82

53.2%

 

(1)賃上げ結果

@平均賃上げ方式

平均賃上げ額は、全体集計(530日現在、加重平均)で「4,672円、1.66%」であり、同一単組比較で昨年実績の95.1%になり、金額ベースでは242円のマイナスに止まっている。(表2参照)

一方地場組合では「4,035円、1.58%」であり、同一単組比較で昨年実績の90.1%に止まり、金額ベースでも443円も下回っている。(表3参照)

昨年が前年比85〜88%だったことや要求比が82.4%もあることを考え合わすと、「賃上げ闘争」は既に昨年曲がり角を回ってしまったことがみてとれる。  

表2. 全体集計(加重平均)

規模

     

 

 

回答・妥結額(円)

組数

人数

回・妥

昨年

昨年比

昨年比

回・妥

 

 

要求

妥結

要求比

要求比

要求

合計

97

16,571

4,672

4,914

95.1%

-242

1.66

5,667

82.4%

-995

2.06

300人以上

17

10,886

5,000

5,170

96.7%

-170

1.7

5,680

88.0%

-680

1.94

100〜299人

22

3,748

4,232

4,391

96.4%

-159

1.58

5,432

77.9%

-1,200

2.17

99人以下

58

1,937

3,681

4,018

91.6%

-337

1.55

6,060

60.7%

-2,379

2.49

 

表3. 地場集計(加重平均)

規模

地   場

 

 

回答・妥結額(円)

組数

人数

回・妥

昨年

昨年比

昨年比

回・妥

 

 

要求

妥結

要求比

要求比

要求

合計

72

7,667

4,035

4,478

90.1%

-443

1.58

5,807

69.5%

-1772

2.28

300人以上

6

3,761

4,483

4,910

91.3%

-427

1.64

5,800

77.3%

-1317

2.13

100〜299人

15

2,328

3,786

4,086

92.7%

-300

1.54

5,549

68.2%

-1763

2.31

99人以下

51

1,578

3,336

3,686

90.5%

-350

1.49

6,214

53.7%

-2878

2.62


A個別賃上げ方式

個別賃上げ方式では7組合が要求、6組合が同方式で妥結した。

妥結内容は

@)30歳標労A…ベアゼロが1組合

A)35歳標労A…ベアゼロが1組合

B)35歳標労B…4組合が妥結

となり、個別方式においても例年になく厳しい結果となった。

 

5.情報開示による相場形成と波及の取り組み

(1) 先行主要組合のベア要求見送りも予想されたため、本部方針にそう形で、構成組織に対して、「自らの職場の賃金実態の把握・分析や独自のベア要求根拠などの重要性」を訴え、これまでの「上げ幅」連動の波及メカニズムに寄りかかった交渉からの転換を求めた。また、定昇(相当分)11年間差の情報開示を通じ、『ベア・ゼロ=賃上げゼロ』の波及を阻止する取り組みを行った。

(2) 情報開示への協力は44組合(14,512人)にのぼり、その平均値をFAX、機関紙、インターネットなど様々な媒体を通して情報発信したが、「賃金カーブ維持のための相場形成といった取り組みが功を奏したとは言い難く、水準などによる新たな相場形成、波及メカニズムへの転換が課題となる。(表4参照)

 

表4. 単組開示の定昇(相当分)額

 

方式

定昇額(円)

率(%)

組合数

組合員数(人)

連合愛媛

平均・個別

5,165

 

44

14,512

連合本部

平均

5,824

1.81

97

485,808

 

6.格差是正について

(1) 連合愛媛構成組織内の格差を見てみると、規模間格差は表2および表3から算出し、表5−1にまとめたように昨年度より拡大し、3極化の傾向が出てきた。一方、全体平均と地場平均とを見てみてもいずれの規模も345円〜637円の格差があるが、昨年に比べるとその格差は若干ではあるが解消傾向にある。(表5−2参照)

 

表5−1. 規模間格差 愛媛の最終集計:加重平均

年度

A−@

B−@

B−A

96

▲ 1,509

▲ 1,247

+ 262

97

▲ 1,409

▲ 1,341

+  68

98

▲ 1,441

▲ 1,419

+  22

99

▲   951

▲   987

▲  36

2000

▲   806

▲   847

▲  41

2001

▲   867

▲   912

▲  45

2002

▲ 1,137

▲ 1,044

+  93

2003

▲   768

▲ 1,319

▲ 551

 

表5−2. 地場組合の格差 愛媛の最終集計:加重平均

年度

G−C

D−@

E−A

F−B

 (最大)

2002

▲ 770

▲ 747

▲ 534

▲ 460

▲ 1,680

2003

▲ 637

▲ 517

▲ 446

▲ 345

▲ 1,664

 

(2) 連合本部集約の平均値と比較してみると‥(表6参照)

(3) 格差是正のために「地域ミニマム運動」・個別賃金要求への移行が求められている。「地域ミニマム運動」については昨年までの設定方法を見直し、より実効性のあるミニマム値を設定すべく、愛媛の賃金実態調査(6,032人分)から地場中小(299人以下)の組合員分(2,303人分)を抽出し、第1四分位の回帰値を基礎としてミニマム設定を行った。(表7参照)

 また、今年の個別賃金導入組合数は7組合・妥結6組合であり、一昨年の19組合・妥結13組合、昨年の9組合・妥結6組合と比べ大きく後退している。

  

表6. 全国と愛媛の格差と推移

年度

連合中央

連合愛媛

中央との

 

額(円)

率(%)

額(円)

率(%)

格差(円)

1990

14,629

5.95

13,765

6.02

864

1991

14,526

5.66

13,536

5.72

990

1992

13,075

4.97

12,882

5.11

193

1993

10,610

3.89

10,155

4.04

455

1994

8,583

3.11

8,337

3.22

246

1995

7,932

2.80

7,586

346

1996

8,234

2.83

7,649

2.95

585

1997

8,521

2.83

7,887

2.90

634

1998

7,940

2.59

7,214

2.69

726

1999

6,495

2.10

5,731

2.06

764

2000

6,033

1.94

4,936

1.88

1097

2001

5,928

1.92

4,956

1.86

972

2002

5,347

1.72

4,379

1.64

968

2003

 

 

 

 

 

 

 

表7. 2002年度愛媛県地域ミニマム

 

20歳

25歳

30歳

35歳

40歳

45歳

愛媛

143,600円

161,400円

177,600円

192,500円

206,500円

219,600円

 

7.『不払い残業の撲滅』運動について

(1) 『不払い残業の撲滅』運動を連合の全国キャンペーンにあわせて展開した。特に『何でも相談ダイヤル』等の相談窓口には40件を超える多くの相談や告発が寄せられ、その実例を整理しながら使用者団体や労働局へ報告し具体的な改善申し入れを行った。

(2) その内容については、「あいた口がふさがらない」といったひどい事案も多く、数件で個別対応を行った。その多くの職場には労働組合は存在せず、使用者側の一方的な指示命令で『不払い残業(労働)』が強制されている実態が明らかになった。

(3) 本運動はマスメディアを通じて広く世間に認知されたため、運動を展開するに当たりある種追い風が吹いたが、本運動については時期的なものでなく通年的なものとすることを確認した。

 

V.今後の取り組みと課題

1.中小共闘センターの取り組み

 本年度も、地場中小組合の支援、意見調整の場を主目的に発足した。地域ミニマムの設定、4,600円ミニマム要求額の設定、総決起集会およびデモ行進、行政、使用者団体への要請行動、早期解決要請書、ミニマム妥結基準3,000円の設定などを行った。

いまだ交渉中の地場中小労組もある中で、連合愛媛としては最終決着をみるまで『中小共闘センター』を中心に支援体制を維持することを確認した。

 

2.ミニマム運動の再構築

 連合愛媛の賃上げ成果を確実に未組織労働者の底上げにつながる『地域別最低賃金』・『産業別最低賃金』の金額改定へ反映できるようにする。

 

3.未組織労働者への情報発信

 未組織労働者への情報発信については、本年実施したインターネットでのホームページを利用して、パートなど総ての労働者に関係する『地域別最低賃金』・『産業別最低賃金』の金額改定状況や『連合愛媛賃上げ速報』を充実させる。

さらに、各種学習会・研修会に未組織労働者の参加ができないか検討する。

 

以上